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YESかNOか半分か

元ニートが、再びニートになって何かいろいろ書いてます

YESかNOか半分か

禁断のお酒『アブサン』と元彼と私

恋愛 海外生活

皆さんはこのお酒をご存じでしょうか?

ペルノ アブサン 700ml 68度 [アブサンスプーン&グラス付]
アブサン【仏:absinthe】

分類 リキュール/蒸留酒
生産国 スイス/フランス/チェコ/スペインなど。
主成分 ニガヨモギ
度数 40度~90度。種類に拠るが、一般に度数はかなり強い。


非常に強いクセのあるリキュールで、以前に製造・流通・販売が禁止されたという逸話があるお酒です。

アブサン』の歴史
1792年 スイス人医師のピエール・オーディナーレ氏がニガヨモギを原料とした薬を蒸留を応用した独自の方法で『アブサン』を開発。
1797年 氏はその製法をフランス人のアンリ・ルイ・ペルノ氏に売却した。ペルノ氏はペルノ・フィールズ社の創設と同時に、『アブサン』を商品化。特に、19世紀フランスの芸術家たちによって愛飲され、作品の題材とされた。
1898年 ニガヨモギの香味成分であるツヨンにより幻覚などの向精神作用が引き起こされるとされ、ベルギーの植民地であったコンゴ自由国で禁止されたのに始まり、20世紀初頭にはスイス・ドイツ・アメリカなどでアブサンの製造・流通・販売が禁止される。
1981年 WHOは、ツヨン残存許容量が10ppm以下(ビター系リキュールは35ppm以下)なら承認するとしたため、製造が復活。
2005年 禁止国であったスイスでも3月1日に正式に解禁された。


安価なアルコールだったために多数の中毒者・犯罪者を出したことでも知られる。アブサン中毒で身を滅ぼした有名人としては、
詩人ヴェルレーヌ
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wikimedia.org
画家トゥールーズロートレック
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blog.eonet.jp
ゴッホがいる。
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asaka.qlep.com
wikipedia.org

日本人だと、太宰治さんが常飲していたのではないかという憶測もあるようです。

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media.tumblr.com
太宰がアブサンを常飲していたという記録はないが、小説『人間失格』の中に以下のような記述がある。

「飲み残した一杯のアブサン。自分は、その永遠に償い難いような喪失感を、こっそりそう形容していました。絵の話が出ると、自分の眼前に、その飲み残した一杯のアブサンがちらついて来て、ああ、あの絵をこのひとに見せてやりたい、そうして、自分の画才を信じさせたい、という焦燥にもだえるのでした」
芸術家が熱狂した「禁断の酒」アブサンを知る - NAVER まとめ


前置きが長くなりましたが、『アブサン』が劇薬と言いたくなるレベルのお酒だということを最初に知って頂きたかったのす。

アブサン』と元彼と私

私が西野さんと付き合う前の彼氏は、ブルースという私より9歳も年上の外国人だった。私が日本に帰国する直前まで付き合っていた人で、彼は「アブサン中毒」と言っていいくらいにアブサンが好きな人だった。


ブルースとの出会いは、私が海外に居た時に働いていたレストランバー。私が働いていたお店の周りにはクラブやバー、レストランが沢山あって、ブルースはその飲み屋街にあるバーの雇われマネージャーだった。「雇われ」だけど、オーナーも気さくで毎日お店で飲んで踊ってるような人だから、結構自由が効いてたみたいだ。


私が働いていた店がオープンして間もない頃に、お客さんとしてブルースはやってきた。私の店のマネージャーとは何度か飲んだ事があったらしく、ブルースが
「オープン祝いにキミたちにショットを奢るよ!」
と突然言い出したので、従業員全員がマネージャーに召集された。キッチンのスタッフも全員。

オープン当初はそんなにお客さんが来なかったから、お店に居たのは10人程度。日本だったら「働いてるのにお酒飲むなんて非常識」という風に思われるかもしれないけれど、私が住んでいた国では結構普通。

クラブとかバーに行ったら、お客さんが従業員にお酒を奢って一緒に飲む姿を良く見かけたし、昼休みのサラリーマンやOL達もうちの店に来て、ビールをたらふく飲んでワインボトルをポンポン昼間っから空けていた。そういう緩いところが結構好きだった。


この時、ブルースが私たちに奢るショットとして選んだのが、例の『アブサン』だった。マネージャーの趣味で揃えたお酒のボトルの中にひっそりと潜んでいたアブサン。それをブルースは見逃さなかった。

「よし、キミたちにこれを奢ろう!」
アブサン(ハプスブルグ)トラディショナル 500ml
ハプスブルグ・アブサン・トラディショナル』-HAPSBURG traditional-

ツヨン(ppm)/酒精(%)
10ppm以下/72.5°

度数にして約72.5°。悪魔のようなスペックを持つお酒。


ひゃっはー!それ来たか!
まいったなーなんて仕草をしつつも嬉しそうにしているマネージャー。いや、貴方お酒弱いでしょ。
ブルースの分も合わせて、ショットグラスを並べてそれぞれのグラスに『アブサン』を注いだ。匂いを嗅いだだけで吐きそうになった。


「Cheers!!(乾杯)」
ショットグラスを高く掲げて、ブルースとマネージャー以外は今にも死にそうな顔でショットを飲みほした。
すぐさま私たち従業員と度重なる嗚咽とえずきの混声10部合唱が始まった。マネージャーはいつの間にか店のトイレに消えていた。
従業員全員で「なんでこんなお酒を置いていたんだ」とマネージャーを殴りたくなったのは言うまでも無い。


そんなわけで、私の『アブサン』とブルースに対する印象は最悪だった。
しかし、その日を境にブルースは仕事が休みの日や休憩の合間にうちの店にやって来て、私やマネージャーにショットを奢りまくるようになった。

流石に72.5°のお酒はきつい。まともに仕事ができなくなる危険性がある為、ブルースに懇願して飲みやすいリキュールに変えてもらった。

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beersofeurope.co.uk
SOURZ Sour Apple
私の好きなスペイン産のちょっと酸っぱい青リンゴの味がするリキュールにしてもらった。女の子でも飲みやすいからオススメです。

「ジャパニーズ・リトルガールに言われちゃ仕方無いな~」
とあっさり要求を飲んでくれたブルース。それから半年間はマネージャーと私とブルースでお互いのお店に行きあいっこをしていた。
昼の営業が終わって、休憩中にブルースのお店に行ってお酒を飲む。
夜の営業が始まって、ブルースがうちの店にきて私たちにショットを奢る。
夜の営業が終わったら、ブルースの店に行ってお酒を飲む。
ブルースは自分の店でもうちの店でもアブサンをがぶがぶ飲んでいた。今考えるとひどい生活だ。でも、毎日陽気で楽しかった。


「ブルースって絶対ルナに気があるよ!」
ある日、マネージャーから唐突にそう言われた。「いやーそれは分かんないよー」ってはぐらかしたけれど、彼女も居ない30歳手前のいい大人が毎日うちの店に来るとしたら、私に好意を持っているか、ゲイでマネージャーに気があるかのどちらかだ。ブルースは前者だった。

それまでは何とも思っていなかったけれど、好きな子を落とすために半年間も同じ店に通い続けてると思うと突然ブルースが可愛く思えた。それでいて一途な人だなとも。
彼が私に好意を抱いているというのは周知の事実だったようで、うちの店のスタッフやブルースの店のスタッフからは、顔を合わせる度に「早く付き合っちまえ」コールが飛んできた。周りからそういわれると、段々異性として彼を意識するようになった。


あと数日でクリスマスという時期になり、私はいつもお世話になっているブルースにプレゼントを贈ることにした。
異性にプレゼントを選ぶのは、私にとっては荷が重いタスクでしかない。プレゼント選びが一番苦手。何を贈ったら喜んでくれるのかが分からない。
けれども、ブルースへの贈り物はほんの数分で決まった。
「そうだ!アレがあるじゃないか…!!」


クリスマス当日。その日も出勤だった私は、早々と仕事を切り上げてブルースのお店へ向かった。手には自分で包装したプレゼントを抱えて。ブルースがプレゼントを開けるところを想像するとワクワクした。
絶対気に入ってくれると確信していたから。


「Merry Christmas!!」
ブルースのお店に居た常連客達に頬を合わせて挨拶していると、奥の方にブルースがいるのが見えた。微笑みながらブルースの元に駆け寄った。
「貴方にプレゼントよ。」
満遍の笑みを浮かべて、彼に包装されたプレゼントを手渡した。
「ありがとう!早速開けてもいいかな?」
そう言うとブルースはカウンターの上で包みを開け始めた。



!!!キミは…僕の好きなものが良く分かっているね!!
そう言って私を抱きしめたブルースの片手には
ハプスブルク アブサン プレミアムリザーブ 89.9° 500ml
『ハプスブルグ・ゴールド・ラベル』
HAPSBURG premium reserve EXTRA STRONG

ツヨン(ppm)/酒精(%)
10ppm以下/89.9°

度数にして約89.9°の『アブサン-エクストラ・ストロング-』がしっかりと握られていた。


実は、家の近所の酒屋にハプスブルグの史上最強にストロングなアブサンが売ってあるのを発見して、プレゼントはこれだ!と即決めしていたのだ。ブルースは予想通りとても喜んでくれた。


その後はブルースと共に89.9°アブサンのボトルを開けて、聖なる夜はそれはそれは悲惨な「ハッピーゲロりんクリスマス」に早変わりしたのでした。

やっぱり、お酒は程々が一番ですね。


アブサン 聖なる酒の幻

アブサン 聖なる酒の幻