YESかNOか半分か

元ニートが、再びニートになったりならなかったり。

YESかNOか半分か

気持ちよく新年を迎える為に古巣を訪問

2013年も終末を迎えようとしているこの時期。どうやら私には残したことがあったようで、“モヤモヤ感”が拭いきれないでいた。2014年を迎えるにあたって、この“モヤモヤ感”が残ってしまうのは大変気持ちが悪い。
新年を迎えるなら、やはりスッキリと清々しい気持ちでこの2013年を終えたいというのが本音だ。

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photo by Senfwurst


その“モヤモヤ感”というのは、以前働いていた職場に半年ほど顔を出していない為に生まれたものだという事を、私は知っていた。
「どこで食事をしようか?」という西野さんの問いかけに、以前働いていた職場の名前を出すと、いつも彼は「勘弁してくれよ」と笑いながら言うのだけれど、先日は違った。彼の方から「ジョーさんの店に行かない?」と話題を振ってきたのだ。
「以心伝心」「テレパシー」そんな言葉が頭をよぎるくらいに、彼は私の心理状態を熟知しているのではないだろうか。正確には私が「年内にジョーさんのお店に行きたい。けど行けない。」というオーラーを悶々と解き放っていたからに違いない。

そろそろ尋ねなければ。半年という時は随分と長かったように思う。今年中にジョーさんの店に行かなければ、きっと私の心はどこか腑に落ちないままで、紫色と黒色のもやがかかったものが年が明けてからもずっと蠢いているに違いない。そう思うと、彼の店に行こうという決心が着いた。


手土産にとお店の従業員とジョーさんの家族宛ての菓子折りを購入して、西野さんと店の前までやってきた。偶然にも以前働いていた後輩たちが居て、驚きながらも嬉しそうに私たちの訪問を歓迎してくれた。
店のシフトも把握していないし、平日だったのでもしかしたらジョーさんは居ないのかもしれないと危惧したが、それは杞憂に終わった。カウンターに寄りかかっている彼の姿を見つけると、なんだかとても懐かしい気持ちになった。一緒に働いていた西野さんもきっと同じ気持ちだったに違いない。


私たちのいる入口の方へとジョーさんがやって来た。薄暗い店内とは正反対の明るい蛍光灯の元に照らされた彼の頭には、白くて細く伸びる線がいくつも見受けられた。最後に会った時には、まだ数本しかなかった白髪が驚くほどに増えていた。まだ30代半ばにも達していないのに。白髪がこれだけ増えるとは……私が職場を去ってから余程苦労してきたに違いない。仕事面だけでなく、家庭面でも。

「実は今、絶賛別居中なんですよ」
私たちが最後に会った時も、夫婦仲が決して良好とはいえなかったけれど、半年も経てば少しは改善されたと私も西野さんも信じていた。けれど、現実はそう甘くない。一度亀裂が入ってしまうと、修復するのは困難を極めるのは、何も夫婦仲に限った事ではないけれども。


「いや~…それにしても増えましたね~」
まじまじとジョーさんの頭を見つめながら西野さんが言った。
「ちょっと!そんな失礼な事…」
「いいんだよ、この人にはこういう風に言うのが一番いいんだから。逆に変に気を使うよりもね。」
西野さんはジョーさんを兄の様に慕っていて、またジョーさんも彼の事をこき使い、いじりながらも可愛がっていた。彼らの方が付き合いも長いし、半年もジョーさんと会っていない私は、以前はどのようにして接していたのか分からなくなってしまっていた。まるで、久しぶりに親戚のお兄さんに会った時の気分。そう、私は結構な人見知り。


西野さんの言葉を受けて、「そうかダイレクトに彼の白髪についてズケズケと言及するアメリカン・スタイルは、(仕事や家庭問題で傷ついた)繊細な日本人の心を傷つけてしまいそうで気を使うのだけれど、逆にジョーさんの場合はそっちの方がいいのか。」と解釈することにした。
「私もさ、最初に白髪染め手伝ってあげましょうか?って言いかけたよー。」とにこやかに告げたのだけれど、「それは違う。」と西野さんダメ出しを食らった。とても懐かしい、私達お決まりの会話のテンポ。


「デートでご飯、どこへ行こう?」そういう時の第一候補は、決まっていつもジョーさんの店だった。けれども、私が辞めてしまってからは顔を出しづらくて、西野さんも行きたがらないから、自然とお店の名前を口にする機会は減っていった。ジョーさんの店で働いている従業員の数名とは親しい仲なので、聞かなくてもほとんどの情報はこちらに流れてきてはいた。話を聞くたびに、「行かなくちゃ」と思ったのだけれど、どうも訪問するに相応しい時期という確信が無かった。しかしながら、今年中には行かなければいけないという。確信とも焦りともとれる感情が私の中にあったのは事実。


半年振りくらいに店内に入って、お気に入りの席に座る。懐かしさと心地よさが入り混じる店内を眺めながら、「やっぱりここだよね。」と西野さんと顔を見合わせて軽く伸びをした。
泣いたり、笑ったり、美味しい思いをしたり。最後は精神崩壊していたのか、泣いてばかりで全く仕事が出来て無かったけれど、不思議な事に悪い思い出よりも、良い思い出の方が蘇ってくる。
古巣はとても居心地がいい。けれど、一度旅立ってしまうと戻ってくる事はなかなか困難だ。もう従業員として帰ってくることは無いけれど、1人のお客さんとして戻ってくるのは、今までの自分を振り返る事が出来るし、思い出に浸って感傷的な気持ちにもなれる。


「それで…お前、今なにしてるの?」
ジョーさんの質問にも、彼と最後に会ってからの半年間でパワーアップした私の成果を発揮できたように思う。

「なーんにも。まだ何もしてないよ。」
そう笑顔で答える事ができたから。


笑う店には客来たる 楽しむ人には福が舞う

笑う店には客来たる 楽しむ人には福が舞う