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YESかNOか半分か

元ニートが、再びニートになって何かいろいろ書いてます

YESかNOか半分か

今は無き、お弁当屋さんの唐揚げの味

戯言 日常 考える


これは昨日、イングリッシュパブで非常に遅めの昼食としてフィッシュ&チップスを食していた時のツイートだ。


イギリス風にフィッシュ&チップスを食す際はモルトビネガーをかけるのが主流だが、私の味覚が1杯のビールのせいで鈍感になっていたからだろうか。


あまりにもモルトビネガーの香りとその味との差があった為に、これでもかというくらいにモルトビネガーを振りかけるという事態にまで進展した。

勿論、フィッシュ&チップスは私の大好物なので全て美味しく平らげたのは言わずもがな。

懐かしい味わい、思い出ごはん

そんな多少、味覚に異常をきたしている私でさえ、自分の「」が持っている記憶に昨夜は驚かされた。


夕飯をダラダラと食べていると、父が仕事帰りに大阪で購入した唐揚げを手に下げ帰宅した。

自慢げに晩酌用にと購入した発泡酒とイナバのタイカレーシリーズをテーブルに広げる父。

その横にはちょっとオシャレな容器に入った唐揚げがあった。

http://www.flickr.com/photos/34948727@N00/9847484256
photo by ultrakml


唐揚げは幼いころからの大好物なので、すかさず手を伸ばす私。唐揚げを1つ摘まみ上げ、美味しそうな揚げ色にウットリとしてから口の中に放り込んだ。

1口噛むと口の中に広がるジューシーな唐揚げの香りと味。


…この味を私はよく知っている。」


実はその唐揚げの味は私が幼少期から愛してやまなかった、とあるお弁当屋さんの唐揚げの味とまるっきり一緒だった。


母方の祖父が生前田んぼを所有していたので、昔は私たち家族や親戚一同が集まり、毎年田植えや稲刈りを行っていた。
その際にお昼ご飯として食べていたのが「まるふく亭(仮)」のお弁当だった。


私が生まれる前から経営していたお弁当屋さんで、家族経営されていた店舗だったのでお店は1軒のみ。

物心ついた頃からまるふく亭の唐揚げ弁当を食べていた私にとって、唐揚げの美味しさというのはまるふく亭の唐揚げが基準となっていた。



元祖・メシマズ嫁 - YESかNOか半分か。

以前にも書いた通り、私の母は元飯マズ代表格だった。
母の作る唐揚げを「唐揚げだ」と認識したことが幼少期は無かった。

無論、母方の祖母は未だに飯マズ代表なので、唯一美味しい唐揚げが食べれる、まるふく亭の唐揚げ弁当を食べる瞬間が私にとって至福のひと時だった。

伝説の唐揚げ

それから時が経ち、時代の流れも虚しく、まるふく亭は経営難からか私がニュージーランドに留学している間に閉店してしまっていた。

帰国してからその事を知った私は、深い悲しみに打ちひしがれた。

もう一度あの美味しい唐揚げが食べたかった……

ただただ無念が残った。


それから今までの数年間、私は様々なお店、スーパー、お弁当屋さんの唐揚げを食べた。美味しいものは勿論あった。

しかしながら、まるふく亭に匹敵する味の唐揚げに巡り合うことはなかった。


そう、昨夜までは。


唐揚げを口にした私は慌てて父にこの事を伝えた。

お父さん!この唐揚げの味、まるふく亭のと一緒だよ!!」

何だって?という表情で唐揚げを口に含む父。

本当だ…。本当にそっくりだ…。

そう言って父も私の意見に賛同した。


ひと口、ひと口、文字通り唐揚げを噛みしめながら懐かしい味を味わった。

まさかまるふく亭と同じ経営者な筈もないし、レシピを売ったりなんてことも何年も昔のことだから恐らく無いだろう。


同じ味を再現したい……そう強く思った。私はもう二度と思い出の味を手放したくは無かった。
レシピを入手する為にそのお店で働くというのも手だが…、残念ながら今のところは実行できそうにもない。


私に出来るのは父のご機嫌を取り、再び例の唐揚げを買ってきてもらえるように仕向ける事だけ。


「昔」に固執してはいけないのだろうか

知り合いの飲食店経営者兼料理長が最近こんな事を言っていた。

昔の味を求めて来られた方がいらっしゃったが、今のコンセプトを理解して頂きたかった為、入念にお話をさせて頂いてご理解頂いた。それでも納得していただけなかったけれど、それはもうしょうがない。」

知り合いは、以前にもレストランを経営していたが一旦は店を閉め、そして今回再び店を出した。そこへ以前の常連客が訪ねてきたという経緯だ。


私自身も18歳の頃からバイトやらなんやらで飲食業界に6年間ほど携わって来たのだけれど、私はそのお客様の気持ちがよく分かる。


以前ニュージーランドで働いていた時も、お店が移転してリニューアルオープンをしたことがあった。

リニューアルしたのはお店の立地や内装だけではなくて、勿論メニューに関してもガラッと変わった。


旧店では取り扱っていた昔からの常連さんのワインの銘柄も、私のお気に入りだったワインもワインリストから消えてしまった。
フードメニューだって以前とは盛り付けや使用している材料も少しずつ違うものもあった。


それでもオーナーはいつか来店されるであろう常連さんの為に、ワインリストに載せていないワインを発注していつでも提供できるようにしていた。

フードの盛り付けや内容だって「旧店の時と同じのがいい!」と仰るお客様がいれば、出来る限り旧店で提供していた時に近い状態で商品を提供していた。


昔とは違う。新しいものを体感して好きになって欲しい。

と考えている知り合いの気持ちも分かる。
過去に固執せず、足元をすくわれないように新たなスタートを切るということも人生においては大切なのだと思う。


けれども私は、シェフが旧店スタイルで準備した料理をサーブした瞬間に見るお客様の安堵の表情や、

これだよこれ!やっぱりこれだね!

と嬉しそうに言いながら食事する彼らの姿を見ていると、人が見た目や舌で記憶している情報を尊重するという行為の大切さを感じずにはいられない。



父が昨夜唐揚げを購入したお店の人も、彼らが自身「うちの唐揚げは美味しい!」と自負して作っておられると思う。

けれど、まさか自分たちが作った唐揚げがこれほどまでに人の思い出を擽る味を醸し出しているだなんて思いもしないんじゃないだろうか。


ちなみに妹もこの思い出の味に触れたようで、私が今日の朝に食べようと取っていた分も食べられてしまっていた。


妹「そうそう!まるふく亭の味にホントそっくりだったから、ついつい全部食べちゃったよ!


一瞬よからぬことが私の頭をよぎったけれども、今回は優しい【思い出の味】に免じて許してあげようと思う。