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YESかNOか半分か

元ニートが、再びニートになって何かいろいろ書いてます

YESかNOか半分か

サヨナラ、お隣さん

今の持ち家(といっても、もちろん私ではなく父が建てたものだけど)に引っ越してきたのが、十数年ほど前。
私は既に親元を離れていたから、ちょうど夏休みの帰省時に合わせて借家から引っ越した。


両隣には既に家が建ち並んでいて、左右に一軒ずつ家があった。
右側の家には、私と歳がそう変わらないであろう子供がいたけれど、一言も口をきいた事がない。イマドキの近所付き合いなんてそんなものだ。

ただ、両親たちはやはり"大人"という立場があった為か、毎年ご近所さん同士で、田舎のお土産を渡しあいするのが習慣になっていった。

近からず、遠からず。無難な距離を保った近所付き合いで、特にトラブルなどもなく平和に過ごしていた。


「お隣さん、明日引っ越すんだって。急だからびっくりしちゃった」

夕飯の食卓で、母がポツリと言った。
急だったので驚きはしたけれど、「いつかそんな日が来てもおかしくはない」と予想出来る状況下にあったのは確かだったので、

「息子さんの所為なのかね……」
と返すことしか出来なかった。


詳しくは知らないけれど、随分と前に息子さんが面倒なことに足を突っ込んでしまったらしく、

「若い娘さんがいらっしゃるから、ご迷惑かけてないか心配で」

お隣のご主人からそう言われた、と父から告げられた時には、息子さんは微妙だけれど、親御さんは絶対に良い人なんだろうなと確信した。結局、十数年まともに言葉を交わすことも無かったけれど。


何ヶ月も前に、たまたま目にした不動産関係の折り込みチラシに、自宅が写り込んでいたので驚いたことがあった。

よくよく見てみると、売りに出されていたのは、勿論わが家ではなく、今回引っ越しをするお隣さんの家だった。
確認して安堵したものの、その時から彼らが居なくなるのではないか、と薄々感じていたのは確か。

両親はそのチラシの件については全く知らなかったようで、大層驚いた素振りを見せた。
母が慌ててゴミ箱を漁ろうとしたから、
「もうだいぶ前の話だよ」
と呆れながら窘めた。


様々な事情があるにしろ、十数年共に"お隣さん"であった彼らが引っ越してしまうのは、なんだか物悲しい。

もしも、あの家の買い手が決まっていたとして、次に入居する人々が必ずしも良い人たちかどうかというのも、その時になってみないと分からない事である。


小学生の頃、同級生が8月の夏休み中に引っ越しをして、9月の新学期になってからは、「新しいお家から通ってるのー」と嬉しそうに話していたのを、羨ましく感じていた。

その頃、まだ自分は一度も引っ越しをした事が無かったから、というのもあっただろうし、引っ越しというものが、何か特別な儀式のように感じて仕方が無かったのだ。


9月からは新天地で(もしかしたら案外近くなのかもしれないけれど)、彼らが無事に新しいスタートを切れることを、勝手に祈っている。

サヨナラ、お隣さん。どうかお元気で。

http://www.flickr.com/photos/28643687@N08/16893986295
photo by Hunky Punk